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就学援助制度とは?基本的な仕組みを理解しよう
就学援助制度は、経済的な理由により小学校・中学校への就学が困難な児童生徒の保護者に対して、学用品費や給食費などを援助する国の制度です。学校教育法第19条に基づき、市町村が実施する重要な教育支援制度となっています。
制度の根拠と目的
この制度は「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない」という学校教育法の規定に基づいています。すべての子どもが経済状況に関係なく、等しく教育を受ける権利を保障することを目的としています。
2025年最新データ:就学援助の現状と推移
就学援助率の変化
近年の就学援助率は緩やかな減少傾向を示しており、2023年度調査では11年連続で減少しています。2021年度の就学援助率は14.22%となり、9年連続で緩やかに減少しました。
この減少傾向の背景には以下の要因が考えられます:
- 景気の緩やかな回復による雇用環境の改善
- 各種手当制度の充実
- 生活保護基準の見直し影響
対象者数の内訳
現在、要保護者(生活保護受給世帯)は約8万人となっており、準要保護者と合わせた総数は140万人程度で推移しています。
就学援助の対象者と認定基準
要保護者(生活保護受給世帯)
- 生活保護法第6条第2項に規定する要保護者
- 生活保護の教育扶助を受けている世帯の児童生徒
準要保護者
市町村が要保護者に準ずる程度に困窮していると認める者で、一般的には以下のような世帯が対象となります:
- 生活保護が停止または廃止された世帯
- 市町村民税が非課税の世帯
- 国民年金保険料の免除を受けている世帯
- 国民健康保険料の減免を受けている世帯
- 児童扶養手当の支給を受けている世帯
- 生活福祉資金の貸付を受けている世帯
収入基準の目安
多くの自治体では、生活保護基準の1.2〜1.5倍程度を収入基準として設定していますが、詳細は各市町村によって異なります。
援助の内容と支給金額
支給される費用の種類
就学援助では以下のような学校生活に必要な費用が支給されます:
学用品費
- 小学1年生:年額約11,630円
- 小学2〜6年生:年額約13,900円
- 中学1年生:年額約22,730円
- 中学2〜3年生:年額約25,040円
新入学児童生徒学用品費(ランドセル代など)
- 小学1年生:約54,060円
- 中学1年生:約63,000円
その他の援助項目
- 学校給食費:実費相当額
- 修学旅行費:実費相当額
- 校外活動費:実費相当額(宿泊を伴わないもの3,690円以内、宿泊を伴うもの6,210円以内)
- 医療費:学校病の治療費
- クラブ活動費:年額約30,150円(中学生のみ)
- 生徒会費:実費相当額(中学生のみ)
- PTA会費:実費相当額
申請方法と手続きの流れ
申請の基本的な流れ
- 学校からの案内文書受領 学校で配付している「就学援助制度のお知らせ」を確認
- 申請書の記入と提出 「請書」に必要事項を記入し、証明書類を添付して、通学あるいは通学予定の学校へ直接持参または送付により申請
- 審査・認定 市町村による収入等の審査
- 結果通知 認定・不認定の結果通知
申請時期と注意点
6月末までに申請いただいた場合は、『4月1日』が認定日となります。なお、7月以降も申請できますが、認定日は『申請日以降』となります。
早期申請のメリット:
- 新入学用品費の入学前支給を受けられる場合がある
- 4月からの給食費等が対象となる
- 年度当初からの学用品費支給
必要書類
一般的に必要となる書類:
- 就学援助申請書
- 収入を証明する書類(源泉徴収票、確定申告書等)
- 世帯の状況がわかる書類(健康保険証の写し等)
- 振込先口座がわかる書類
制度周知の改善状況
子供の貧困に関する指標の一つになっている「入学時及び毎年度の進級時に学校で就学援助制度の書類を配布している市町村の割合」は22年度に82.3%となり、前年度より1.2ポイント改善しました。
周知方法の多様化
各自治体では以下のような周知方法を採用しています:
- 学校での書類配布
- 自治体ホームページでの情報公開
- 広報誌での制度案内
- 入学説明会での説明
よくある質問とその回答
Q: 就学援助を受けていることが他の人にわかりますか?
A: 各自治体では個人情報の保護に十分配慮しており、他の保護者や児童生徒に知られることはありません。
Q: 年度途中で申請できますか?
A: 可能です。ただし、認定日は申請日以降となるため、早めの申請をおすすめします。
Q: 私立学校に通っている場合は対象外ですか?
A: 基本的には公立の小中学校が対象ですが、一部の自治体では私立学校に通う児童生徒も対象とする場合があります。
Q: 兄弟姉妹がいる場合は?
A: 対象児童生徒一人ひとりについて援助が受けられます。
就学援助制度の今後の展望
こどもまんなか実行計画2024での位置づけ
「こどもまんなか実行計画2024」において、「就学援助の実施状況等を定期的に調査・公表することで、各市町村における就学援助の適切な運用を促すとともに、就学援助が必要な世帯に活用されるよう、各市町村におけるきめ細かな周知・広報等の取組を促す」こととされています。
今後期待される改善点
- オンライン申請システムの導入拡大
- 入学前支給の全国統一実施
- 支給項目・金額の充実
- 制度周知の更なる改善
高等学校での就学支援制度との連携
中学校卒業後も継続的な教育支援を受けられるよう、高等学校等就学支援金制度や高校生等奨学給付金制度が整備されています。これらの制度についても併せて確認し、切れ目のない支援を受けることが重要です。
まとめ:就学援助制度を有効活用するために
就学援助制度は、すべての子どもが経済的理由により教育の機会を失うことがないよう設けられた重要な制度です。申請を検討している保護者の方は、以下の点を心がけましょう:
- 早期申請:年度当初からの支援を受けるため、6月末までの申請を目指す
- 正確な情報収集:居住地域の具体的な基準や手続きを市町村に確認
- 必要書類の準備:スムーズな審査のため、必要書類を事前に準備
- 継続的な活用:毎年度申請が必要なため、継続的な手続きを心がける
経済的な困難を感じている世帯は、まず相談から始めてみることをおすすめします。子どもたちの学習環境を整えるために、この制度を積極的に活用していきましょう。
本記事の情報は2025年8月時点のものです。最新の情報については、お住まいの市町村の教育委員会にお問い合わせください。


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